Kesennuma

2025.08.18
海が教えてくれるvol.5 〜気仙沼市魚市場〜

 

“海と生きる”気仙沼の水産業を支える、気仙沼市魚市場。

熊谷育美が気仙沼の水産業をお伝えする「海が教えてくれる」は今回、気仙沼水産業の集積地である、気仙沼市魚市場を探検!気仙沼市産業部水産課の齋藤英敏さんに、ご案内いただきました!

 

◾️深夜1時に始業

気仙沼市魚市場を訪れたのは、5月21日午前7時半。

でも、すでに深夜1時ごろから働いている人もいるそうです。

 

育美 私が、寝るころ!

 

齋藤 水揚げされる量にもよりますが、午前1時ごろから水揚げが始まります。船から水揚げ後,仲仕(なかし)と呼ばれる船員OBの方達が魚の下処理を行い、その後、気仙沼漁協の方達が計量、配列などを行ないます。午前5時ごろから始まる下見や午前7時ごろから始まる入札に向け、水揚げされた魚を準備しています。

 

気仙沼市魚市場は全長853m。北棟は定置網(さけ、ひらめ、いか等)、A•B棟では、かつお一本釣り、かつお旋網(まきあみ)、C棟では大目流網、まぐろ延縄(はえなわ)、D棟はさんま棒受網、旋網運搬船(イワシ、サバ、マグロ等)と、漁業種に分けられています。

2階の見学デッキをA棟からB棟へ移動していると、1階荷捌き場ではカツオの水揚げがはじまっています。場内は、水音と電動フォークリフトの移動音、機械音が反響しています。

 

 

 

齋藤 今日は、宮崎県と三重県の船が入港し、水揚げが50トンから60トン。水色のスカイタンク1つに水産物や海水、氷など合わせて約1トンを入れることができます。フォークリフトで運ぶ際に、スカイタンクの空重量(水や氷を含む)と漁獲物が入った重量を計量し、漁獲物の実重量を計測しています。

 

これから向かう新設施設のC棟D棟は、平成31年4月に供用を開始しました。震災前に建て替えを計画中でしたが、津波で被災。計画を練り直して、新鮮で安全・安心な魚介類を全国にお届けできるように、粉塵やカラスやウミネコなどの鳥類、入場者の管理がしやすいよう高度衛生管理に対応した閉鎖型の施設になりました。以前は魚市場に来るか電話で確認していた入船情報も、今はインターネットで誰でも見ることができて、水産関係の会社の方々は、スマホやパソコンで確認ができます。

 

高度衛生管理型の場内は、ICカードで解錠するのですが、その前に手を消毒しなければ解錠しない仕組みになっています。

 

■巨大! サメ&マグロゾーンに潜入

C棟は、主力であるサメやメカジキの水揚げ場所。場内に足を踏み入れると、衝撃の光景が……。

 

育美 ぎゃー!スゴイ!怖すぎる!

 

齋藤 ネズミザメ(地方名:モウカザメ)の心臓は“もうかの星”という珍味になるので、船上ではなく、水揚げされてから処理されます。昔から血がついている方が鮮度持ちが良いとされていて、洗わずにそのままの状態です。ヨシキリザメのヒレはフカヒレに、身はハンペンなどに加工され、需要もあり高値で取り引されています。みなさんのICパスカード入れも鮫皮ですよ。

 

育美 サメを釣る専用の漁船があるわけではないんでしたっけ?

 

齋藤 一本の長い縄(幹縄)に釣り針がついた枝縄をたくさん取り付け、海中に仕掛けを張って魚を釣る延縄(はえなわ)船で、小笠原沖など約1か月かけて漁獲してきます。サメは、メカジキやマカジキ、マグロ漁の副産物です。ヒレはフカヒレとして高級中華食材に、肉はハンペンなどのすり身やペットフード、骨はサプリメント、皮は皮革商品として、無駄なく活用しています。気仙沼は日本のサメの水揚げ量の約80%を誇り、専門の加工業者も多いことからサメの一大拠点になっています。

 

ヨシキリザメ、ネズミザメ(モウカザメ)など、メカジキ、マカジキなど、子どもの身長を優に超える魚がずらりと並び圧巻です。

 

魚市場で、小野健商店の小野寺さんに遭遇

 

 

場内に入札終了5分前のベルが鳴り響くと、モニター前に仲買人が集まってきます。

気仙沼市魚市場はセリではなく入札で、時間までに専用の紙に金額等を記入し、OCR(読み取り機器)で読み取り、5分程度で大型モニターに落札結果が発表されます。

 

 

 

齋藤 気仙沼市魚市場では生鮮マグロを取り扱うので、冷凍マグロが水揚げされることはほぼありません。気仙沼船籍の遠洋マグロ船は多いんですけど、それは主に焼津や清水に水揚げされます。

気仙沼では、1か月ぐらいの操業で獲れてくる生のマグロを取り扱っています。各船に漁獲枠が割り当てられておりますが、漁獲枠が増加したことや漁場が気仙沼に近かったこと、資源が回復傾向にあることもあり、まとまって水揚げされることも多くなって来ています。ただ、今は船の数も減っていますし、近海延縄船は主に月水金の3日のうちで、水揚げが重ならないように、入港を調整しています。

 

 

仲買人のみなさんは、木製の柄に金属の爪がついたノンコと呼ばれる手カギと懐中電灯を手に、魚切り口やお腹の中を見て、それぞれの視点で魚を品定め。まさに目利き、ですね。

 

■変わる入札

南棟(A~D棟)の魚は、豊洲や仙台、名古屋、大阪にも運ばれるそうです。そして、齋藤さんと育美は観光物産施設の<海の市>に近い北棟に移動。北棟では定置網で獲られた、近海の魚が中心。小魚類は、値がつきそうなら大船渡や南三陸などから陸路で気仙沼にも運ばれてくるそうです。

 

齋藤 気仙沼市魚市場では、電子入札を震災前からいち早く取り入れていましたが、北棟では平成30年からタブレット入札を開始。北棟は扱う魚種も多く、入札までに時間がかかっていましたが、大幅に時間短縮されました。現在使用しているタブレットが更新時期なので、個人のスマートフォンで入札できないかを検討中です。

 

場内で、育美の父の同級生が経営する平塚商店の奥様に会いました。入札用タブレットを手に、魚を選んでいるところ。育美はタブレットを見せていただきながら、魚屋さんはサクサクと入力手順を教えてくれました。

 

 

平塚さん 前は紙に書いて、それを中の人がチェックしていたから時間もかかってね。みんな『まだかな〜、何やってんの』って(笑)。最初はタブレットも間違うこともあったけど、もう慣れたね。魚市場の仕事も人がやらなきゃいけない仕事もあるし、でも機械化も進んで時間も短縮できた。すごい変わり方だね。

 

育美 魚市場でよく見る“競り”ではなく、入札という方法やタブレットを活用していることに驚きました。それも、魚種が多いからこそ、時代とともに試行錯誤の結果なんですね。気仙沼はスローフードの町。水揚げされたお魚を丁寧にいただくことが根付いている町。海があって、魚がいて、こうして魚市場で深夜や早朝から働く人たちがいて、私たちも美味しいお魚を食べることができているんだと、改めてありがたく感じました。

 

齋藤 気仙沼は、生鮮カツオやサメ、メカジキの水揚げは日本一。近海の魚も取り扱っているので魚種の幅が広いんです。ひとつの魚種が不漁の時には、他の魚でカバーしてきました。以前は全国的には10何位や20何位の水揚げでしたが、初めて昨年ベスト5に入りました。

 

 

2011年6月28日、的な被害を受けた気仙沼港に静岡県のかつお旋網漁船「第31大師丸」が震災後初めて入港し、約35トンのかつおを水揚げしました。この入港が、気仙沼漁港と魚市場が再開し、「海と生きる」気仙沼、そして「生鮮かつおの町」気仙沼の復活を目指す一歩となりました。

 

 

気仙沼市魚市場:1935年(昭和10年)4月に開設。移転、増設、改築をしながら、2011年の東日本大震災で被災。2019年(平成31年)2月、高度衛生管理に対応した気仙沼市魚市場C棟、D棟建築工事完了。新しくなった魚市場には、水産情報発信施設やクッキングスタジオも整備しています。

気仙沼市魚市場 宮城県気仙沼市魚市場前8-25

 

協力/気仙沼市産業部水産課

撮影/スタジオアート

構成・文/藤川典良

 


■補習のコーナー■

小野健商店さん、阿部長商店さんにお仕事を伺い、そして今回は気仙沼市魚市場と、これまで海産物が私たち消費者に届くまでのお仕事を伺ってきました。ここで改めて、海産物の水揚げから消費者に届くまでの流れを見てみましょう。

※気仙沼水産データブックを元に加筆

 


🔳目指せ 鰹王!スタンプラリー🔳

今夏、かつお溜め釣り漁伝来 350年で盛り上がる気仙沼。

市内の対象店で、かつおを食べたり買ったり、泊まったり、イベントに参加してスタンプをゲットすると、豪華賞品が当たるイベントは10月31日(金)まで実施中!

目指せ 鰹王!スタンプラリー


■気仙沼に来たら、朝活!■

<朝の魚市場 ガイドツアー>

 

毎日、旬の魚が水揚げされる気仙沼魚市場。ずらりと並ぶ、かつおやメカジキ。活気あふれる入札、縦横無尽に魚を乗せて走るフォークリフト。ガイド終了後には、参加証明書をもらえます。ガイドさんに観光スポットや飲食店、お土産の情報も尋ねてみよう!

※事前予約が必要です。開催日は、魚市場が開催している日

詳しくは、コチラから

https://kesennuma-kanko.jp/fishmarket-morningtour/

 

 

気仙沼の観光情報はこちら↓

気仙沼さ来てけらいん

 

 

 

 

 

 

 

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