Kesennuma

にじむ、まじわる
うみ、そら、ひと
〜水が彩る情景 山本重也さんと気仙沼 vol.2〜

何気ない日常を描いた気仙沼の風景画が、SNSで日々発信されているのをご存知ですか?

光が織りなす一瞬の風景を捉えた絵が印象的な、気仙沼在住のイラストレーター山本重也さんの水彩画です。

けれど線画で描かれた人物画も、生き生きとした仕草や表情がとってもキュート。

前回に引き続き、山本重也との対談をお届けします。

途中で、山本さんと同じ関西出身で気仙沼在住の若手イラストレーターも乱入し……。

 

 

■水彩画と線画

育美 山本さんといえば、毎日Facebookにもあげていらっしゃる『日常茶飯絵』の水彩画のイメージが強いですが、線画も描かれていますよね。今年の<tbc夏祭り>の『サンドのぼんやり~ぬTV』Tシャツの伊達さんをダルマ、富澤さんをこけしにして描いたイラストもすごく可愛かった!

 

山本 線画で、子どものさりげない動きや親子の様子を書くのが得意ですね。当時の大阪の場合は、「こんなの描ける?」ってタッチが違うのを要求され、それに応えられなければプロになれない。いろいろ試行錯誤しながらやってる中で、作風が増えた感じです。けれど手が増えたらその分、東京では苦労したんです。東京はイラストレーターも多いので、個々の作家性を重視する市場。「あなたの一番を出してください」みたいな感じで、自分の得意が認められて仕事が来るって形なんです。東京に行くと、得意な画風を要求されました。だから色々ある画風を一旦、絞り込んでリスタートしました。

 

『鉄棒』

 

育美 専門的なことはもちろん分からないんですけど、なんかバリエーションを求められたり個性を求められたり、すごいですよね。

 

山本 僕の場合は、性分的に絞ることができなくて。ざっくりと水彩画で風景、線画で人物をちょっと漫画的な表現みたいに、大きく二つに分かれている感じです。

今までは風景だけだったけど、気仙沼だったら働く人たちを描きたいなと思っています。絵になる海と自然、働く人たち。絵の題材になるものが気仙沼は豊富で、気仙沼の町に魅力を感じています。

 

育美 線画で描いた気仙沼の人たち、またいつか拝見したい! 

 

■連なる日常を描く

ここで、『イロナキカゼ』のリリックビデオを手がけた、ささをかみさきさんが同席。ささをかさんは、山本さんと同じ関西出身で、2年前に気仙沼に移住してきました。作風もまったく違うイラストレーターの二人。話はさらに、イラストの具体的な話題へ……。

※ささをかさんについては、「気仙沼とわたし」<音楽を描く>をご覧ください。

 

ささ (ハガキ大の作品ファイルを見せてもらいながら)イラストは大好きなんですけど、私は水彩画には手を出していなくて……。いつも描いてらっしゃる「日常茶飯絵」は、この大きさですか?

 

山本 毎日描くっていうのが一つのテーマなので、大きかったら毎日描ききれないじゃないですか。

 

ささ なるほど!

 

右:山本重也さん、中:ささをかみさきさん、左:熊谷育美

 

山本 ライフワークとしてやってるんで、毎日続けるために発見というか発明したのがこのサイズ。小さいので、描く時間を節約でき、毎日続けることができる。

 

ささ これって、どのくらいの時間で描かれるんですか?

 

山本 テーマにもよるんですけど、早ければだいたい1時間から2時間。

 

ささ すごいなぁ~。原画を見ることができて、感激です! めっちゃいいですね。

 

育美 どこかのインタビューで拝見したんですけど、一枚が一つの作品ではなく<作品群>として山本さんは捕らえてるっているようなことをおっしゃってて、なるほどなぁと思ったんですよね。連なる毎日ということで、それが一つの作品になってるってことですね。

 

山本 表現として、一枚の風景画っていうのはある意味普通っていうか、水彩画自体は特別じゃないですけど、毎日つながってる表現っていうのは珍しいというか、あんまりそれやってる人がいない。ある意味なんて言うかな……、観光資源にもなるかなと。地元の人が見ても描かれた場所を見て「この場所はあそこだな」とか会話が広がって、旅行で来た人には訪れたのが夏であっても、違う冬の風景も楽しめるっていう、なんかそういう場所を作れたらいいな。それはもう長期の計画と言うか。

 

育美 素敵! 山本さんは、絵画の基礎っていうのはどこで学ばれてきたんですか?

 

山本 大阪で、ベテランのイラストレーターに弟子入りみたいな形です。当時って、教えてもらったというよりも技術を見て学べみたいな感じでした。決定的に違うのは、やっぱりプロのスピード感! なんで、こんなに早いんだって思ってみていました。プロがどんなプロセスで依頼され、作品になるのかをを弟子入りして初めて見て、衝撃を受けました。一日中デッサンして、先生がいて見せてもらいながら、もっと早く正確にっていうことを現場で学みました。緊張感の中で描くっていうので、また自分が鍛えられます。ささをかさんは、何で描いているの?

 

ささ 私はipadです。山本さんはずっと水彩画ですか?

 

山本 僕が30歳ぐらいの時にコンピューターが出てきて、これからの若い子たちはそれこそコンピューターで描くのが当たり前で、たぶんコンピューターで描いていたら勝てねぇなと思った 。で、基本になるものは絵の具で描こうってその時に決めて……。

絵の具で描くってすごく時間もかかるし、経験が必要。古い感じだけど、それでも何十年先に残るためにはもうこれしかないと思ってやってたんです。仕事では状況に応じてデジタルにも対応もしなきゃいけないのでデジタルで描くこともしてます。でも人前で絵を描く時は実際絵の具で描く方が説得力があると思うんです。

 

山本重也さん、気仙沼のアトリエ風景

 

育美 私はまだ実際に拝見していませんが、仙台の個展の時にも会場で描いていらっしゃいましたね。見たかった~。

 

ささ なんか、私も絵の具で描きたくなってきました!

 

山本 ちょっとずつでもね、やってた方がいい。きっと、絵の具でやっていたことが、またデジタルにもその発想が活かせるから、ちょっとやった方が作品の幅が広がりますよ。

 

■拠点を移す楽しさ

育美 山本さんは大阪出身で、東京、仙台に住んで、今度は気仙沼ですけど、拠点を移して行く楽しさみたいなものはありますか?

 

山本 拠点を移す怖さと楽しさと、同時にあるんですけど……。でも何ていうのかな、そこで人脈が広がっていく時の喜びと、知らない所に行ってどうなるのかという不安と……。人脈ができてくると、その不安は小さくなって、不安な気持ちが薄らいでいく。楽しさって、そういうところにあるのかなと思うんですよね。

 

育美 いいことだけじゃなくて、怖さも常にある……、深いですね。

 

山本 新しい場所に来て良かったと思うのは、何かそういうことなんですよ。怖かったけど飛び込んでみて、怖さを克服することで生まれる楽しさ。

それに気仙沼はもちろん景色もいいけど、人がいい。ご近所へ引越しの挨拶に行ったら、「いいところでしょ。食べ物は美味しいし、景色も綺麗だし」って、みんな前のめりになって町自慢をしたがる。あまり都会ではない、新鮮な驚きでした。気仙沼の人は、気仙沼が大好きですよね。色んな人にお会いし人の輪も広がって、いつの間にか今年の気仙沼みなとまつりで踊ることにもなってしまいました。週に1回、踊りの練習に行ってます 笑。

 

育美 早速、すごいですね 笑。気仙沼に山本さんが移住して来てくださり、文化の発展のためにもよろしくお願いします。私も山本さんの絵からエネルギーをいただいて頑張りたいと思います。

 

(取材日 2023年7月21日)

 

 

■気仙沼みなとまつりを終えて■  山本重也 談

気仙沼に移り住んで初めてのみなと祭りで、 ひょっとこ連の一員としてはまらいんや踊りとみなとまつりパレードに参加しました。 はまらいんや踊りは大勢が一斉に踊る活気ある踊りで、二日目のみなとまつりパレードではひょっとこ踊りを観衆の前で披露しました。 ひょっとこ踊りは注目度が高かったので緊張もしましたが良い経験となりました。 来年はもっと練習をしてこのお祭りに参加したいと思います。

とにかく本当に充実した楽しい二日間を過ごせました。

 


PROFILE 

山本重也  

1964年生まれ、大阪市出身。1986年大阪にてイラストレーターとして活動を開始。2001年東京に活動拠点を移し16年間東京で活動した後、2017年秋に仙台、2023年5月末に気仙沼市に移住。

1996年「中国新聞広告賞 カラー部門賞」受賞。2004年「日本出版美術家連盟 新人賞」受賞。仙台の情報誌『りらく』で「山本重也の日常茶飯絵」、NHK仙台放送局『大好き東北 定禅寺おしゃべり亭』でゲストの似顔絵を担当。日本国内の個展をはじめ、釜山、ニューヨークでも展覧会に参加。書籍、新聞小説などの装丁画や挿絵、音楽CDジャケットイラスト、広告等数多くを手掛ける。

2003年11月から、一日一枚描く「日常茶飯絵」を継続中。2023年、山本重他作品展『光』開催。

 


構成・文:藤川典良