熊谷育美3年3ヶ月ぶりの新曲『きみは、たからもの』、いかがだったでしょうか?
3ヶ月連続リリースの第2弾『旅に出かけよう』は、曲調もガラッと変わって明るく爽快な楽曲です。この3ヶ月連続リリースの楽曲アートワークを手かげるのは、熊谷育美とは幼少の頃から付き合いのある、気仙沼出身在住のクリエイティブディレクター志田 淳さん。
対談場所に選んだ気仙沼の酒造<男山本店>は、2人にとっては馴染みの場所。内湾のランドマーク魚町店舗は重厚感がありますが、昭和7年に建てられた客座敷もある男山本店の木造建築は和風でそれはまた落ち着いた雰囲気満点です。
「タメ口でファンの人に引かれないかな〜」と心配しつつ、インタビュースタートです。
■拳で語りあった仲?!
アツシ
最初の印象はまったく覚えてなくて、「出会い」っていう概念でもないくらい、気づけば知ってた。
俺が小学生の頃だから(笑)。
その頃の生活は、夏休みなんかは毎日12時間稼働。家には寝に帰ってるだけだったよね?
育美
アッくんは今年31? じゃ、6つ下だね。
学年ではかぶってなくて、習い事っていうか、ミュージカルの舞台でお芝居したり歌ったりダンスを踊ったり。部活の仲間って感じ。
アッくんが小学1年生の頃だったかな……、出会ってからはもう20年ぐらいの付き合いになるんだね。一番、ちっちゃくて、可愛かった。
アツシ
お互いに、変わんないよね。
育美
一度お芝居で、私がいじめる役で、本番中に間違えてホントに殴っちゃったりも、あったね。
アツシ
ビンタじゃなくて、グーで、おでこに(笑)。
育美
痛かったろうに……。芝居は続けなきゃって、立ち向かってきたよね(笑)。
アツシ
殴られた俺よりも、一番動揺してたよね。拳で語り合った仲(笑)。
育美
(爆笑) あの時は本当にごめんねっていつも思ってます(汗)。
アツシ
なので、育美ちゃんのデビュー前から知ってるし、デビューしていく過程というか、大きくなっていく過程も見ているので。このタイミングで一緒に仕事ができるのはありがたいですね。エモい。
育美
なんか、ドラマティック。
■楽曲の温度感をデザインに
育美
今回、3年3ヶ月ぶりの新曲で、前々から一緒にお仕事したいねって。だから、最初から頼みたいなって思ってた。で、お願いしたところ、快く引き受けてくれて……。今回の3ヶ月連続配信は決まっていて、アートワーク制作のスケジュールが可能かどうかってところもOKいただいて。5月だったかな? 音源もその頃に上がって、すぐに聴いてもらって。音楽のデザインは初めて?
アツシ
うん、提供するのは初めてで。でも、音楽の仕事をしたいなって想いはずっとあって。もともとバンドをやっていて、自分たちのグッズをつくることからデザインを始めたから。音楽にデザインで関わりたいなっていうのはずっと思っていて、今回ようやく実現しました。
育美
そうだね。アッくんは音楽も好き、映画も好きで。
アツシ
依頼してくれて、嬉しかった。オンラインで最初の打ち合わせをした時に、いろんな案が出て、その中で「子どもたちの写真を集める」って話になって……。
何をどう表現すると、届けたい人にベストな状態で届くかなというのを考えた時に、最初は集まった写真をコラージュっぽく色々組み合わせていくのがいいかなと思ったんだけど、楽曲のテーマを考えた時に、もっと温度感のあるアートワークにしたいなと。パソコン上で写真をいじって組み合わせていく感じだと、どうしても無機質感が出てしまう。もっと有機的なものにしたいなって作りながら思っている時に、写真をプリントアウトして壁に貼って、それをもう一度写真に撮るのがいいんじゃないかと思って。
育美
なるほどな、と思いました。最初、子どもの曲を書いたから、イラストがいいかなって相談もしたよね。だけど、気仙沼を中心に実際にそこで暮らすお子さんの微笑ましくリアルな写真を、本当に温かいデザインにしていただいて、すごく気に入っています。
アツシ
このアートワークはどうしても朝日が差し込む中で撮りたくて。でも、スケジュール的に「この期間には撮りたいなきゃな」って思ってた時期がずっと雨。まったく朝日が差し込まなくて(笑)。
育美
せっかく晴れたと思ったら、陽の動きで影の位置が変わっていったりもして、大変だったんだよね?
アツシ
そう、その都度壁の写真を貼り直して。
壁には前日に貼っておいて、後は撮るだけの状態にしておいたんだけど、奥さんに「陽が入ってるよ!」とたたき起こされて、なんとか撮れたアートワークです(笑)。
育美
今回は、とてもたくさんの写真提供を、いろんな人たちにもご協力いただいて。すごく素敵でかわいい写真ばかり!
アツシ
本当にたくさん集まって、実際の枚数は……、数えてない。
どれも良い写真だったので、チョイスが大変でした。
育美
で、今回第二弾。
アツシ
ガラッと曲調も変わって、爽やか。
育美
昔作った曲で、ライブでは歌ったこともあったんだけど、いつ音源化するかは決まっていなくて。
コロナでみんなこの2年ちょっとずっと我慢を強いられて。でも、少しコロナも落ち着いてきて、7月からまたちょっと旅行にも行きましょうという世間の動きの中で、リリースのタイミングは今だ!って。急いで歌詞もブラッシュアップしました(笑)。
アツシ
マネージャーさんとも話していて、三部作連続感は出したいなと思って。なので基本的なデザインのフォーマットは変えずに、プリントした写真を改めて一枚の写真に収めるという手法は変えずに作っています。今回は、気仙沼市内の観光スポットの写真をプリントアウトして、旅に出かける前日に何をしようか迷ってるアートワークにしようと。パソコンで行き先を調べながら、フィルムカメラも準備して、サングラスもあって、っていう。旅に出る直前の雰囲気を表現できたらなと思って作りました。
育美
密かな私の裏テーマとしては、気仙沼にもぜひきてほしいなというのがあるので。旅に出かけようとは言いつつ、気仙沼に来てほしいなと思ってます(笑)。
■地域全体のデザイン力向上を
育美
アッくんは追い込まれ系?
アツシ
うん、追い込まれてからじゃないとやらない(笑)。
育美
(笑) 私も。でも、追い込まれて〆切間際になると不思議と降りてくんだよね。
アツシ
で、結局できちゃうのよ(笑)。
育美
(笑)そうなのよ。でもね、自分ではそんなつもり全くないんだけど、〆切が近づいてくると多少家族にも八つ当たりとかしているらしく。私に話しかけないで!っていうオーラをめちゃめちゃ出しているらしい。
だから、基本は一人で黙々と作業するに尽きる(笑)。
アツシ
分かる。家族からしたら、「お前が悪いんだろ」ってことだけど。
育美
んだ。夏休みの宿題状態(笑)。
育美
アッくんは、今後は何かやっていきたいことって?
アツシ
二軸あって、ひとつは自分の作家性が出せるような作品が主軸になっていければ嬉しいなと思ってます。だからこそ今回のアートワークの話は嬉しかったです。曲を聴かせてもらって、自分が感じたアイデアを提案させてもらえたし。
もうひとつ情報を伝えるデザインでいうと、市内の事業者さんたちがデザインを頼むハードルをいかに低くしていけるかというところが自分の中でのテーマで。たとえばふるさと納税の仕事に関わってみて、地元でめちゃくちゃ良いものを作っている事業者さんばかりで商品の質もすごく良いのに、パッケージのコストをかけられていなかったり、うまく宣伝できていないということを聞くことも多くて。地域全体のデザイン力を上げていくみたいなことが、これからのテーマとしてはあるかな。
育美
ひとつのものをつくるのにも時間をかけて、悩んで搾り出してるんだろうな。素敵な仕事だなって思うし、アッくんの新作を見るのをすごく楽しみにしてる。
今回の対談場所<男山本店>は、1912年創業の気仙沼の酒造。気仙沼で水揚げされる新鮮な海の幸の美味しさを引き立てる蒼天伝が人気。東日本大震災復興支援企画として仙台の老舗百貨店・藤崎が男山本店のコラボレーションで販売した海中貯蔵酒『蒼天伝 OCEAN MEMORY』のラベルデザインを手掛けたのが志田 淳さん。
対談終了後、男山本店の菅原明彦社長が顔を見せられ、お酒にまつわる面白い話も伺いました。それは、またゆっくりと別の機会に。
構成・文:藤川典良 撮影:皆川太郎(pensea)
アートワーク写真提供:『たからものプロジェクト』にご協力いただいたみなさま、
気仙沼市、気仙沼観光推進機構、大島パドルクラブ
取材協力:株式会社 男山本店
PROFILE:志田淳(シダ アツシ)さん
1992年 宮城県気仙沼市出身。大学生時に発生した東日本大震災を受け、古着を使った支援を開始。その後、アパレルブランド<memento mori>を立ち上げる。東京から気仙沼へUターンし、本格的にグラフィックデザインを開始。市内在住クリエイター集団「気仙沼独創倶楽部」主宰。デザイン業のほか、コミュニティFMラヂオ気仙沼パーソナリティ、気仙沼市ローカルベンチャー推進協議会、音楽ユニット「海街ろまん」等、気仙沼市内で多角的に活動している。
【3ヶ月連続配信リリース第2弾 / 旅に出かけよう】
7/13(水)Release
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