Kesennuma

2026.02.20
海が教えてくれる Vol.11 〜勝倉漁業 Part .2〜

 

2023年、気仙沼市は官民連携の地域コンソーシアム「気仙沼市デジタル水産業推進協議会」を立上げ、水産庁が全国から公募する「デジタル水産業戦略拠点」に応募。デジタル水産業戦略拠点(※1)に選定されました。勝倉さんは、(一社)宮城県北部鰹鮪漁業組合の代表理事、気仙沼市漁港利用協議会会長も務めています。遠洋漁業での洋上デジタル支援、漁港でのデジタルの動きについてもお聞きしました。

 

■進む、水産業のデジタル化

育美 これまで遠洋漁業のこと、通信環境の進歩で陸上の情報が得られやすくなっていることをお聞きしました。通信環境というお話しの流れで、気仙沼市が取り組んでいるデジタル水産業について教えていただけますか?

 

勝倉 まずは、遠隔の医療相談。これまでは、洋上で病気や怪我をした時には船員保険の関係の病院に有料の電話で問い合わせていました。しかし衛星電話の料金は高いので、ちょっとした病気や怪我で電話するケースはありません。それが症状を悪化させる一つの要因とも考えられるので、もう少し気軽に乗組員が24時間365日、いつでも相談できる窓口を作ることができないかと考え取り組んできました。いろんな問題を検討しクリアしながら、ようやく2025年12月からLINEを使ったメディカルダイヤルのサービスが開始され現在テスト運用しています。

今は、気仙沼船籍の遠洋かつおまぐろ漁船、近海まぐろ漁船に限定したテスト中です。

 

育美 それは、ご家族も安心。遠洋漁師さんのお守りですね。

 

勝倉 けれど、遠隔医療は限られた範囲でしか認められません。診察になると診療報酬も伴いますが、目指すのは無料相談。それが一番難しかった。なんとか、365日24時間無料相談できる段階まで進み、現在テスト中です。

 

 

もうひとつは、洋上で働く乗組員の遠隔支援です。これから先、経験の浅い機関員に対して陸上から支援できる体制を整えたいと考えています。でも、機関室の中はエンジン音などでものすごい騒音。市販のヘッドセットでは太刀打ちできません。できれば不具合のある箇所を見ながら、リアルタイムで指示を聞き、対応できないかと……。今は暗礁に乗り上げていますが、可能性を探っているところです。

 

育美 先ほどからお聞きしていた最新の通信技術で、そんなところまで考えられるようになっているんですね。

 

■気仙沼港の風景もAIで監視

勝倉 私は気仙沼漁港利用協議会の会長もしているので、デジタル技術を使って港の管理を効率化できないか、いろいろ検討しています。

 

育美 港の管理の効率化???

 

 

勝倉 気仙沼港は岸壁利用のルールに基づいて管理されています。育美さんもご存知のように、毎年12月から7月までサンマ船がたくさん停船します。加えて、帰港した遠洋まぐろ船や近海まぐろ船、かつお船や旋網船、小型船など、全国から集まる多くの船があり1年を通じて慢性的な岸壁不足という課題を抱えています。日本で最も漁船の係留が多い港ではないでしょうか。

管理するのも大変で、監視員2人が毎朝港を循環して確認しています。

 

育美 駐車場の監視員みたいですが、それは大変だ。

 

勝倉 それをAI搭載の監視カメラでやれないかと、昨年10月に魚市場屋上や各岸壁に設置しました。停船管理を24時間自動解析できないかテストを開始していますが、港は人や車など動くものが多く、停泊船のみの監視はなか難しい。

 

「勝栄丸ブログ」より:2025/10/26 気仙沼の港町岸壁にAIカメラ設置

 

他には、ドローンによる管理です。それも人が操作するんじゃなくて、自動で飛び立ち、所定のコースを飛び、映像を撮って、元の場所に戻り充電することも提案いただきました。しかしドローンは規制が厳しいので、それも今は検討中です。

 

育美 なんだか、お掃除ロボットみたいですね(笑)。

阿部長商店社長の阿部泰浩さんも、内湾に並ぶ漁船も観光資源とおっしゃっていました。気仙沼市のデジタル水産業、楽しみです!

 

勝倉 気仙沼港の機能があるからこそ、これだけ多くの船が活動できます。造船所、鉄鋼所、エンジン整備、無線、電気、仕込み業者、塗装業者……。ありとあらゆる機能が気仙沼には詰まってるんです。

気仙沼は、宮城県の外れの田舎の小さな港町。だけどそれは、陸から見たら。みんなが仙台や東京に向けて行くのと一緒で、漁船は気仙沼を目掛けてくる。それは船にとって一番居心地が良く、便利な場所だから。気仙沼は海から見れば、1番の町なんです。私はそう思っています!

 

医療相談に遠隔修理……。海の上って、「電波が……」ってイメージでしたが、通信技術の進歩って素晴らしいですね。それに、気仙沼内湾で整然と並ぶ漁船も、人の目からデジタルへと、これまで出来なかったことが、デジタル化でどんどん可能性が広がっています。

 

「勝栄丸ブログ」より:2026/1/03  多くの船が係船するお正月の気仙沼港

 

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1 デジタル水産業戦略拠点整備推進事業:水産庁は令和5年度(2023年度)、地域が一体となって水産業のデジタル化を効率的・効果的に推進するモデルとなる「デジタル水産業戦略拠点」を創出しています。

気仙沼市デジタル水産業推進協議会では、「遠洋・沖合」「沿岸・養殖」「海業」「漁港」「水産データ」のテーマについて事業化を目指し取り組んでいます。

また,現在モデル地域は令和6年度に静岡県焼津地域と鹿児島県地域、令和7年度に三重県南伊勢地域と愛媛県愛南地域が選定されています。

 

(取材日:2025年12月17日)

撮影/スタジオアート

構成・文/藤川典良