
水産に縁のない都市部の人にはなかなか想像できないかも知れませんが、これまでは継ぐものと思われていた漁師の世界に自ら飛び込む若い人が今、確実に増えているように思います。

2025年12月某日、気仙沼魚市場前の横丁で、若手漁師さんが隔月開催しているという居酒屋を覗いてきました。この日参加した漁師さんはお手伝い含む7人。気仙沼出身、他県からの移住者など、さまざまな経歴の若手漁師さんの熱気に、心地よく酔ってしまいます。
■開店、漁師居酒屋
気仙沼市魚市場前、トレーラーハウスが並ぶ一角が、2019年にオープンした<みしおね横丁>。BAR、沖縄料理、インドネシア料理、メキシコ料理、麺処、朝7時から営業している鶴亀食堂、そして漁師さん用の銭湯(男性のみ)と個性的なお店が並んでいます。

そのみしおね横丁で隔月開催されるイベント「やるっきゃナイト」。鶴亀食堂では、若手漁師さんが自分で育てた、もしくは獲った海産物を持ち寄って、お客さんに振る舞います。

メニューは持ち込んだ漁師さんが決めるのので、「もうすぐ開店するよ」というタイミングでも、まだメニューの下書きをしていて、「値段もどうする?」ってその場で相談。わちゃわちゃしてる間に、予定の18時をほんの少し過ぎて、ようやく開店しました。

この日のメニューは、刺身がアイナメ、〆鯖、アワビ、ホヤ&ワカメset。普通においしい、アナゴの白焼き、カガミ鯛の干物、サラ貝とナッツ炒め、ムール貝のナッツ炒め、スルメ、塩辛、ホタテ紐の和物。ご飯ものとして、サラ貝の炊き込みご飯&あら汁の12品。
■地元、地方と、漁師も獲れたて
今回は趣向を変えて、若手漁師さんご本人のアンケートでお伝えします。
Q1:出身地 Q2:前職 Q3:漁師を志した理由
Q4:漁師として働いた感想 Q5:今後の夢や目標
○松影拓朗さん(29)マルショウ水産・牡蠣養殖・大島

A1:愛知県豊田市
A2:警戒船乗組員
A3:誇りややりがいをもって働く漁師の方がとてもかっこよかったから。

A4:海の上での仕事は危険と隣り合わせで、その中で協力しあって獲る興奮はほかにないと思います!
A5:いずれは自分の船をもって独立したい。
○佐藤優太さん(26)松島網・定置網・唐桑

A1:宮城県気仙沼市
A2:気仙沼魚市場の職員
A3:小さい頃から釣りが好きで将来は漁師になろうと思ってたから。

A4:最初は思ってたよりもかなり大変で辞めようかと思う時もあったけど徐々に覚えることも増えてきてそれが楽しく、成長を感じられたこと。
A5:野望としては若手漁師が増えてくれることで漁業をより盛り上げれたらなーと👍
○菅原遥斗さん(21)浦水産・ホタテわかめ養殖・唐桑

A1:宮城県気仙沼市
A2:学生
A3:親方と僕の親が知り合いで、丁度休学し地元に戻ってきて仕事を探してるタイミングで、海の仕事やってみる?と声がかかり、お手伝いとして初めて海の仕事をやってみると、思った以上に楽しくて、続けていくうちにこの仕事で食っていきたいと思ったから。

A4:体動かすのが好きだったので仕事自体は好きな部類で、実際仕事をしていて常に動いてるので自分には合っていると思う。
元々早起きが苦手で最初は苦労したけど段々体が慣れてきて、今では早い時間でも起きれるようになったのは自分でもビックリした。
A5:みんなが食べてみんなが美味しいと言ってくれる[物]を育てて行きたい!
○大畑直樹さん(25)日門定置網生産組合・定置網・大谷

A1:千葉県
A2:千葉工大中退
A3:海と魚が好きで体を動かして仕事をしてみたいと思ったから。

A4:やはり自分で取った魚を食べるのがいちばんの醍醐味です。
本当に美味しいですしこれをもっとみんなに知ってもらいより価値をつけたいと思います。
A5:魚価を上げ魚食をより身近にそして魚の魅力に気づいてもらえるよう努力していきます。
○甲斐景都さん(24)蔵内之芽組・わかめホタテホヤ養殖・本吉

A1:宮崎県日向市
A2:岩手大学 人文社会科学部 卒業
A3:気仙沼は「漁師を大切にする町」という印象があり、移住者の私でも漁師になれば町の人から大切にしてもらえると思ったため。

A4:朝出勤してから退勤するまでで、体力的には相当消耗しているものの、なぜか最後はいつも元気に笑顔で帰宅するんです。なんでかなって考えたときに、「楽しい・嬉しい・ロープワーク覚えた」とかいうポジティブな感情が1日に何度も発生していることが分かり、そういう前向きな感情が”疲れ”を上回った結果、笑顔で退勤できているのだと感じました。私は芽組のメンバーが大好きで、この仕事にも誇りを持っています。
A5:漁業権を取得して、アワビを30キロ獲ること!
■気仙沼に来てね!
この日参加したメンバーの紅一点、甲斐景都さんは、大学時代に体調を崩し、知人に誘われワーキングホリデーで気仙沼へ。そこで今の親方のもとでお手伝いをするうちに、「芽組の親方が作ってくれたお昼ご飯は自然と安心して食べることができました。今まで食べ物は全部怖くて食べることができなかったけど、おじいちゃんが育てたホタテは、安心して美味しく食べられるんです。だから、蔵内之芽組で働かせてもらうことに決めました!」。
漁師になるキッカケはさまざまですが、甲斐さんのように海産物が心を癒してくれる場合もあるんですね。

漁師さんは男性職場のイメージですが、女性でも大丈夫?
「まず、女の子だからって諦めなくていいと思う。漁師は怖いってイメージあるけど、勝手に判断しないで。私は漁師って意外と優しいんだよって発信していて、それを見てDMを送ってくれた人もいるし……。まずは、ここに飲みに来てっ!!!」
朝から昼まで営業している鶴亀食堂も、みしおね横丁名物の「やるっきゃナイト」(隔月開催)では、漁師居酒屋として夜営業しています。漁師さんが持ち寄る食材は数に限りがあるので、早めのご来店を。普段はあまり聞くことのない漁師さんの本音やバカ話を酒の肴に、今宵も更けていきます。

■育美 漁師居酒屋に参加して
料理もお酒も美味しかったけれど、何より心に残ったのは、漁師さんたちの表情でした。
自分たちで獲った魚を捌き、振る舞い、語る。
漁師さんと直接触れ合えるこの空間は、お客さんにとっても、とても貴重な時間だと思います。
本当に素敵な企画ですね。
また次回も楽しみにしています。
今年もよろしくお願いします!
(取材日:2025年12月13日)
撮影/スタジオアート
写真提供/平井慶祐(仕事風景、鶴亀食堂カウンター内集合写真)
菅原結衣((アンケート大畑さん写真)
構成・文/藤川典良